2013年下期 読んでよかった!5冊

2013年下期に読んで、記憶に残った5冊(微妙に2014年になってから読了したものもあるけれど・・・)。2013年上期から大きく変わった点として、Nexus7上で自炊を含む電子書籍を読むようになったこと。Nexus7を使う前は、電子書籍は読みにくかったり、没頭できなかったりするんじゃないかと思っていたけれど、全くの杞憂。少なくとも小説や新書については、紙の本とほぼ同じユーザービリティに達している。

カラマーゾフの兄弟

カラマーゾフの兄弟(新潮文庫)

  • 作者: フョードル・ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
自分で勝手に開催している「おっさんになった今こそ、名作を読んでみようキャンペーン」の一環として読了。学生時代に読んだ「罪と罰」はネガティブ独白の多さに「ロシア人ってのは粘着質で大変」ぐらいが正直な感想。この本もどうせ退屈なんだろう・・・という先入観で読み始めたところ、これが面白い!宗教問答や恋愛騒動、そして父殺しの犯人探しといった推理小説的な要素まで、エンターテイメント要素が盛りだくさん。

本書の大きなテーマの一つに「沈黙する神」がある。有名なのは大審問官の下りだけれど、個人的にはその直前の、イワンによる「沈黙する神」への拒絶こそに感銘を受けた。人間がどんなに悲惨な状況にあったとしても、沈黙を続ける神に対する絶縁状。この箇所だけでも本書を読む価値があった。

おそらく今改めて「罪と罰」を読むと、また違った感想になるのだろう。


「結局のところ俺は、母親が犬どもにわが子を食い殺させた迫害者と抱擁し合うなんてことが、まっぴらごめんなんだよ!いくら母親でも、その男を赦すなんて真似はできるもんか!赦したけりゃ、自分の分だけ赦すがいい。母親としての測り知れぬ苦しみの分だけ、迫害者を赦してやるがいいんだ。しかし、食い殺された子供の苦しみを赦してやる権利なぞありやしないし、たとえ当の子供がそれを赦してやったにせよ、母親が迫害者を赦すなんて真似はできやしないんだよ!もしそうなら、もしその人たちが赦したりできないとしたら、いったいどこに調和があるというんだ?この世界じゅうに、赦すことのできるような、赦す権利を持っているような存在がはたしてあるだろうか?

俺は神を認めないわけじゃないんだ、アリョーシャ、ただ謹んで切符をお返しするだけなんだよ」

ビジテリアン大祭

ビジテリアン大祭 (青空文庫)

  • 作者: 宮沢賢治
  • 出版社/メーカー:青空文庫
同じく「おっさんになった今こそ、名作を読んでみようキャンペーン」の一冊。宮沢賢治自身はベジタリアンだったそうだ。この本もベジタリアン 対 アンチ・ベジタリアンの架空の論争を描いている。ネタバレになるので詳細は書かないが、この本の唐突な幕切れは賢治が単純なベジタリアンであったわけではなく、ベジタリアンという思想のある種の不健康さに対して、複雑な思いがあっただろうことが推測される。

自分は全く持ってベジタリアンではないのだけれど、ある程度はその思想に共感できる。「万物の霊長(もしくは食物連鎖の頂点)である人間は、他の生き物を食料とする権利を持つ」といった考えは諸刃の剣なわけで、これが正しいのであれば、人間より強い立場の生物が出現した際に、人間を飼育し、食料とすることが正当化されうる。

他の生き物を食料とすることを無理に正当化しようとせず、なるべく苦しい思いをさせずに、感謝して頂くくらいが今のところの自分の立場。

「諸君、私の疑問に答えたまえ。動物と植物との間には確たる境界がない。パンフレットにも書いて置いた通りそれは人類の勝手に設けた分類に過ぎない。動物がかあいそうならいつの間にか植物もかあいそうになる筈だ。動物の中の原生動物と植物の中の細菌類とは殆ほとんど相密接せるものである。又動物の中にだってヒドラや珊瑚類のように植物に似たやつもあれば植物の中にだって食虫植物もある、睡眠を摂る植物もある、睡る植物などは毎晩邪魔して睡らせないと枯かれてしまう、食虫植物には小鳥を捕とるのもあり人間を殺すやつさえあるぞ。殊ことにバクテリアなどは先頃まで度々分類学者が動物の中へ入れたんだ。今はまあ植物の中へ入れてあるがそれはほんのはずみなのだ。そんな曖昧な動物かも知れないものは勿論仁慈に富めるビジテリアン諸氏は食べたり殺したりしないだろう。ところがどうだ諸君諸君が一寸菜っ葉へ酢をかけてたべる、そのとき諸君の胃袋に入って死んでしまうバクテリアの数は百億や二百億じゃ利けゃしない。…」

 

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ

  • 作者: 森見登美彦
  • 出版社/メーカー:角川書店
小汚い男子大学生を書かせたら一流の森見登美彦だが、本作品は小学生の少年が主人公。2010年のSF大賞受賞ということで手にとってみた。”Science Fiction”というよりは”Science Fantasy”。結局のところ、謎が解けずに終わるところも不思議系。

研究熱心でおっぱい好きな主人公のアオヤマ君や、アオヤマ君が憧れている歯科助手のお姉さん、いじめっ子のスズキ君、森見登美彦の他作品と同様にキャラ立ちがすばらしい。そして森見登美彦なのに爽やかな読後感(笑)。最初は小生意気なガキンチョだと思っていたアオヤマ君がどんどん可愛くなってくる。今やうちの息子のロールモデルです。

アオヤマ君によるおっぱい名言は大人も参考にすべき。世界が少し平和になるかも。

「怒りそうになったら、おっぱいのことを考えるといいよ。そうすると心がたいへん平和になるんだ」

ノックス・マシン

ノックス・マシン 電子オリジナル・コンデンス版

  • 作者:法月 綸太郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
「このミステリーがすごい! 2014年版」の第一位(の電子書籍版)。ミステリ好きならタイトルだけでピンとくる通り、「ノックスの十戒」をテーマとした作品。ちなみにノックスの十戒は、ロナルド・ノックスによって提唱された、推理小説を書く際のルールであり以下の10項目からなる。

  1. 犯人は物語の当初に登場していなければならない
  2. 探偵方法に超自然能力を用いてはならない
  3. 犯行現場に秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない
  4. 未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない
  5. 中国人を登場させてはならない
  6. 探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない
  7. 変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない
  8. 探偵は読者に提示していない手がかりによって解決してはならない
  9. “ワトスン役”は自分の判断を全て読者に知らせねばならない
  10. 双子・一人二役は予め読者に知らされなければならない

この中でも”政治的に正しくない(politically incorrect)”第5項の、「中国人を登場させてはならない」が本書の重要な鍵となっている。ただ、ミステリをテーマにしているものの、種類としてはガチSF。量子力学やらタイムマシンやらゲーム理論やら、ミステリとSFの両カテゴリに興味を持つ読者でないと取っ付きにくいかも。この本が1位ということは、ミステリ好き兼SF好きって、結構多いのかもしれない。


ユアンはもっと柔軟な公理モデルを求めて過去の文献を読みあさり、興味深いテキストを発見した。「ノックスの十戒」ーイギリスの作家ロナルド・ノックスが千九二九年、アンソロジーの序文として発表した探偵小説のルール集である。
これはまさに自分が探し求めていたものだ、とユアンは直感した。それと同時に、ホイ教授らがノックスのテキストを意図的に無視していた理由もわかった。
「ノックスの十戒」には、政治的に正しくない記述が存在している。

フォーチュン・クエスト

フォーチュン・クエスト(1)- 世にも幸せな冒険者たち

  • 作者: 深沢美潮
  • 出版社/メーカー:KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
こちらも電子書籍で。中学生の頃に妹から借りて読んでいたのが懐かしい。
第一巻は1989年に出たとのこと。まだその時代にはライトノベルという言葉はなかったけれど、その走りだったと思う。
(ちなみに、ライトノベルという言葉が使われ始めたのは1990年代始めだそうだ。)

懐かしさ補正もあるかもしれないけれど、大人になった今でも面白いです。20年以上続いているのも納得。

いまでないとき。
ここでない場所。
この物語は、1つのパラレルワールドを舞台にしている。
そのファンタジーゾーンでは、アドベンチャラーたちが、
それぞれに生き、さまざまな冒険談を生みだしている。
あるパーティーは、不幸な姫君を助けるため、邪悪な竜を倒しにでかけた。
あるパーティーは、海に眠った財宝を探しに船に乗りこんだ。
あるパーティーは、神の称号をえようと神の出した難問にいどんだ。
わたしはこれから、そのひとつのパーティーの話をしたいと思っている。
彼らの目的は…まだ、ない。

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